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前橋地方裁判所 昭和43年(行ク)6号 決定

申立人 小畑四郎 外一九名

被申立人 前橋市

主文

申立人らの本件各申立を却下する。

申立費用は申立人らの負担とする。

事実

第一申立人らの申立の趣旨、理由の要旨

申立人ら代理人は、「被申立人が昭和四一年三月二五日、申立人小畑四郎に対してなした別紙第一目録記載の、同福島安一に対してなした同第二目録記載の、同立見一男に対してなした同第三目録記載の、同小林朋一に対してなした同第四目録記載の、同藤井武平に対してなした同第五目録記載の、同立見幸一に対してなした同第六目録記載の、同樋口幸太郎に対してなした同第七目録記載の、同福島元雄に対してなした同第八目録記載の、同立見広一に対してなした同第九目録記載の、同小畑重吉に対してなした同第一〇目録記載の、同小畑広次に対してなした同第一一目録記載の、同立見昭一に対してなした同第一二目録記載の、同太田松雄に対してなした同第一三目録記載の、同山田辰五郎に対してなした同第一四目録記載の、同山田倉吉に対してなした同第一五目録記載の、同小林竹次に対してなした同第一六目録記載の、同小林真六に対してなした同第一七目録記載の、同関口健寿に対してなした同第一八目録記載の、同山田寿太夫に対してなした同第一九目録記載の、同山田直二郎に対してなした同第二〇目録記載の、各仮換地指定処分の効力は本案判決確定にいたるまでいずれもこれを停止する。」との裁判を求め、その理由として主張するところの要旨は次のとおりである。

一、被申立人は前橋都市計画西部第二土地区画整理事業(以下本件土地区画整理事業という。)の施行者として昭和四一年三月二五日申立人らに対し申立の趣旨記載の各仮換地指定処分(以下本件各仮換地指定処分という。)をなした。

申立人らは本件各仮換地指定処分に対し昭和四一年四月二八日群馬県知事に対して審査請求をなしたが、昭和四二年一二月二五日同県知事による右審査請求を棄却する旨の裁決の通知を受けたので、昭和四三年三月二五日前橋地方裁判所に本件各仮換地指定処分の取消しを求める訴を提起した。

二、本件各仮換地指定処分は次の理由により違法である。

(一)  本件土地区画整理事業を施行する区域(以下本件施行地区という)は全体の九五%以上が農地であり、残部の宅地もそのほとんどが農民の宅地であるが、土地区画整理事業の対象土地は専ら宅地に限定されるべきであるからこの点において本件土地区画整理事業の施行は違法であり、従つて本件各仮換地指定処分も違法である。

本件土地区画整理事業は土地区画整理法に基づいて施行される事業であるところ、もともと同法に規定する土地区画整理事業は都市における公共施設の整備改善および宅地の利用の増進を図ることを目的とし、そのために土地所有権の剥奪制限が許容される制度であることからいつて右の理は自明である。

(二)  本件土地区画整理事業は当該土地所有者(農民)の利益を全く無視して専ら申立外前橋工業団地造成組合(代表者群馬県知事神田坤六)の工場誘致の利便を図る目的のために施行されるところのものであるが、土地区画整理法に規定する土地区画整理事業とは公共の利益のみならずこれと当該土地所有者の利益とが一致することを基礎にして行われるべき制度であるから本件土地区画整理事業は法の目的を逸脱した違法のものであつて憲法二九条一項、三項に違反し、従つて本件各仮換地指定処分も違法である。

本件土地区画整理事業の目的が右のとおり土地所有者の利益を全く無視し、専ら工場誘致の利便を図るものであることは、(1)その施行地区がすでに耕地整理を経ており農地の利用上は何の障害もなく、区画整理の必要性は全く存しないこと、(2)本件各仮換地指定処分の減歩率は後記(四)のとおり公簿面上平均二〇%、実面積平均二五%を越えること、(3)本件土地区画整理事業の事業計画(以下本件事業計画という。)によれば施行後の水田耕作可能面積は測量増をも考慮して五〇%に減少すること、(4)本件事業計画によれば施行後の国および地方公共団体所有の道路は七七%の増加であるうえ主として幹線道路三本の建設用にされるのであつて幹線道路以外の道路の新設、拡幅用に使用される部分はわずかにすぎなく、またいわゆる区画街路についても無益な道路敷部分を含んでいるのであり、このような道路敷地の増加は誘致しようとする工場の原料製品の輸送のために必要と判断された結果であること、等の点に徴しても明らかである。

(三)  本件土地区画整理事業が前記(二)のとおり専ら工場誘致の利便を図る目的のために施行されるものである結果、申立人らは二五%の土地を奪われたうえ従来の水路を破壊されて水田の耕作が不可能となるから申立人らの農業経営と生活は破壊され、ひいては農業をやめて転業するかあるいは一旦土地を売つたうえ山地に移転して開墾するかのいずれかを余儀なくされるが、かかる本件土地区画整理事業は憲法二五条一項、二二条一項に違反するものであり、従つて本件各仮換地指定処分は違法である。

申立人らのうち申立人福島元雄、同小畑広次、同小林真六、同小林朋一のように本件施行地区外に全く水田を有しないものは勿論、また同立見幸一のように施行地区外に水田を有するものも自家用米の自給が不可能または困難になるものが多い。

(四)  本件各仮換地指定処分による減歩率は公簿面上平均二〇%、実面積平均二五%を越えるが、農地に対するかかる高度な減歩率による仮換地指定処分はそれ自体合理性を欠き、法によつて許容される裁量の範囲を越えるものであつて違法である。けだし市街地においては相当率の減歩があつても宅地利用価値の増加によつて補われるが、これに反し農地の場合はこれに接する道路がたとい二〇%拡幅されたとしても農作物の増収等の農地利用価値の増加は少しももたらされないからであり、また前記のとおり本件土地区画整理事業が専ら公共の利益のためのみを目的とする点から考えれば農地に対して減歩は許されないと解されなければならないからである。

(五)  被申立人は土地区画整理審議会(以下審議会という。)の委員(以下審議会委員という。)の選挙を適法に行わずに本件各仮換地指定処分をなしたから同処分は違法である。

被申立人は本件施行地区内における本件土地区画整理事業賛成派と隠密裡に結びついて同事業を遂行してきたものであるが、審議会委員選挙についても当初から賛成派だけの無投票当選を画策し、賛成派有志に対し右選挙が行なわれることを反対派に知らせないよう指導したため賛成派有志による隠密裡の個別折衝によつて立候補届出がなされた。またこのようにして予定された候補者のうち申立外小畑兼五郎および同小畑賢が本件施行地区内に土地を所有しない無資格者であつたため、これを知つた被申立人は急拠昭和三九年一二月九日前記兼五郎に対しては賛成派に属し、かつ審議会委員の申立外小畑勇から二筆の畑を贈与されたことにし、前記賢に対しては同人の同居の父である申立外小畑牛三から当然相続が予定されている土地のうちから二筆だけを生前贈与されたことにし、それぞれについて被申立人の職員が代行して所有権移転登記手続を了した。このようにして結局反対派に漏れることなく無投票選挙によつて審議会委員を賛成派で独占し得たのである。

なお、申立人らは昭和四〇年七月一五日ごろすでに選挙が施行されたことを知つて驚き、直ちにリコールを行なおうとしたが、六カ月を経過しなければならないと言われたので、昭和四一年に至つて再びリコールを企てたが、選挙人名簿に登載された一三三名のうちには被申立人の故意によつて登載されたままでいた二〇名の無資格者のほか八名の死亡者がおり、リコールのための署名必要人数は正しくは有権者の三分の一である三五名であつたにもかかわらず被申立人は四五名であると主張して譲らなかつたので、申立人らは遂にリコールを断念した経過がある。

(六)  被申立人が本件事業計画を定めるに当り、市長においてこれを適法に公衆の縦覧に供しなかつたからこの点からも本件各仮換地指定処分は違法である。

(七)  本件事業計画によれば事業に要する費用は二億一〇〇〇万円であるところ、その約三分の二に当る一億三八二八万六三九五円はいわゆる保留地処分でまかなうことになつており、被申立人の負担金はわずか三八九四万九四一五円にすぎず、右の保留地処分金を捻出するために実に三万五四五八・〇五坪の土地を「費用減歩」の名のもとに無償で取り上げようとしているのである。かかる「費用減歩」は土地区画整理法一一八条に定める費用施行者負担の原則に違反し、憲法二九条一項、三項に違反するから本件各仮換地指定処分は違法である。

三、申立人らは本件各仮換地指定処分の執行停止を求める緊急の必要性がある。

被申立人は昭和四三年五月ごろからブルドーザーを五、六台に増やし、かつ人夫も大幅に増員して耕作中の農地上に道路を建設する工事を強行しつつあり、この結果申立人小畑広次の所有全耕地の三分の一以上が道路敷地となるほか、少なくとも道路敷地となる部分の既設の水路が破壊されてしまい、水田の耕作が不可能になるものが多いが、かくてはいずれも専業農家である申立人らとしては生活を維持し得なくなる。また被申立人が建設する道路が将来舗装されてしまえばたとい本訴において勝訴するも原状に復することは極めて困難となる。そして、以上のほか本件施行地区内で現に耕作されている農地の半分以上が申立人らの所有であること等の諸点に徴すると本件各仮換地指定処分の執行停止を求める緊急の必要性がある。

なお、被申立人は昭和四三年六月二〇日申立人らに対し「換地とは無関係に事実上水田の耕作をしてくれてよい。」と述べて申立人福島元雄、同小畑広次、同小林真六、同小林朋一、同立見幸一に約六反三畝の水田を提供したことはあるが、仮にこの「仮使用」の点を考慮したとしても右申立人五名は自家用米の供給すら不可能である。

よつて、申立の趣旨記載のとおり本件各仮換地指定処分の効力の停止を求める。

第二被申立人の答弁、主張の要旨

被申立人代理人は、主文第一項同旨の裁判を求め、申立人らの申立の理由に対する答弁として主張するところの要旨は次のとおりである。

一、申立人らの申立の理由一の事実は認めるが、同二、三の主張は争う。

二、本件各仮換地指定処分は次の理由によつて適法である。

(一)  土地区画整理事業の対象土地が専ら農地以外の宅地に限定されなければならないことはない。

本件施行地区は昭和四年内務大臣により都市計画区域と決定されて内閣の認可を得、その後昭和三二年建設省より土地の用途地域変更の指定がなされて工業用地、商業用地、宅地用地等にそれぞれ区域の指定がなされ、さらに昭和三七年二月一二日被申立人は本件施行地区決定の申請を建設省に対してなしたところ、都市計画審議会に付議された結果、その承認を得たうえ同年三月二二日建設省より右決定する旨の告示がなされたので、被申立人はこれに基づき都市計画法(大正八年法律第三六号、以下同じ)一二条、土地区画整理法の各規定に従つて本件区画整理事業を施行しているのであつて同事業の施行および本件各仮換地指定処分は適法である。

(二)  本件土地区画整理事業は都市計画の目的で健全なる市街地の造成を図るため施行されるものであつて、その結果施行地区内の土地の一般的利用価値が増進されることは公知の事実であるから右目的は適法であり、従つて本件各仮換地指定処分も適法である。

なお、本件施行地区内の土地は人口都市の集中、経済の発展、交通の爆発的混雑、産業構造の変化による公害等の防止の方策を樹立する公共上の必要性のため農地として維持することが不適当と判断されて昭和三六年五月一日首都圏整備法二条五項の都市開発区域に指定されているからこの区域内の土地について工業団地造成事業がなしうることは都市計画法一三条の規定によつて明らかである。

(三)  本件各仮換地指定処分の結果自家用米の供給が不可能となつたとしても現在の米の配給事情から判断しても申立人らの農業経営と生活を破壊する筈はない。工事の結果水路が消滅しても、なお水路を必要とする農耕地が存在する場合には当然水路を新設するから耕作を不可能にすることはなく、従つて何ら土地所有者に影響を及ぼすことはない。

また本件施行地区を含む総社地域は元来畑作地帯で水田が少ないため本件各仮換地指定処分において申立人らに水田の仮換地を指定できなかつた次第であるが、そもそも市街地内に存在する農地が周囲の状況の変化によつて従前のように使用できなくなることは止むを得ないところである。

なお、本件土地区画整理事業は現在の土地の境界、地目をすべて一応白紙の状態にして換地整理後の土地に新たに境界線を設定して従前の権利関係および地目を異動させないこととするものであつて、このため本件各仮換地指定における地目の表示がないのである。

(四)  本件各仮換地指定処分の減歩率が略二〇%であることは認めるが、そもそも土地区画整理事業の施行地区は健全なる市街地として造成されることが適当と認められた区域であるから施行地区内の農地も急速に宅地化される傾向にあり、減歩されても当該土地の一般的利用価値は従前とは比較にならぬ程増大するし、また換地の評価額が従前地と比較して減少するときは金銭をもつて補填されるから経済的には等価とみるべきであり、さらに前記減歩率は被申立人が施行している他の区画整理事業におけるそれと比較して決して過大ではないから本件各仮換地指定処分の減歩率は適法である。

(五)  審議会委員の選挙は適法に行われたうえ審議会が設置されている。すなわち被申立人は群馬県知事による本件事業計画の認可があつた後である昭和四〇年四月二八日、前橋市告示第三三号をもつて審議会委員選挙期日を昭和四〇年六月三〇日と定める旨公告し、次いで選挙人名簿の縦覧につき期間、場所および時間を定めてこの旨公告し、さらに同年六月一五日、前橋市告示第五一号をもつて前記選挙人名簿が縦覧期間中異議なく確定したことのほか選挙人、選挙すべき委員および予備委員の数等について公告した。そして同年六月一七日審議会委員選挙の立候補の届出を締め切つて立候補者の住所、氏名を公告したが、立候補者の届出が選挙すべき委員の数を越えないので同年六月一八日、土地区画整理法施行令二六条の規定に基づき前橋市告示第五四号をもつて投票を行わない旨公告し、一方学識経験者のうちから市長が選任すべき委員三名の選任を了したので同年七月一日前橋市告示第六〇号をもつてこれらの委員を含む一五名の審議会委員の住所、氏名を公告したものである。

そして、被申立人は昭和四〇年七月六日から昭和四一年三月一六日まで一〇回に亘り右審議会および協議会で検討し、さらに関係権利者の意見をきいて仮換地の調整を行つたうえ本件各仮換地指定処分に及んだものである。

なお、被申立人が賛成派に対し選挙が行われることを反対派に知らせないように指導したり、被申立人の職員をして申立人ら主張の登記手続を代行せしめたことはない。ちなみに申立人らのうち申立人小畑四郎は選挙人名簿縦覧期間中の昭和四〇年五月二五日前橋市役所において右名簿の縦覧をなしている。

(六)  本件事業計画は適法に二週間公衆の縦覧に供された。

三、本件各仮換地指定処分は昭和四一年六月一日その効力が発生したので、被申立人は既定の計画に基づき工事を実施しているのである。この結果申立人小畑広次の従前地の約三分の一が道路敷地になるほか既設の水路が工事によつて消滅することは認めるが、申立人らの水田の耕作が不可能になつてその生活が維持できなくなること、本件施行地区内で現に耕作されている農地の半分以上が申立人らの所有であることは否認する。

被申立人は申立人らが水田の耕作を要求するので、施行地区内の保留地に水田を造成してこれを申立人立見昭一、同福島元雄、同小畑広次、同小林真六、同小林朋一、同立見幸一に仮使用させている。

四、本件各仮換地指定処分の執行停止をなすことは公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある。

第三疎明関係〈省略〉

理由

一、被申立人が本件土地区画整理事業の施行者として昭和四一年三月二五日申立人らに対し申立の趣旨記載の各仮換地指定処分をなしたこと、申立人らが右各仮換地指定処分に対し昭和四一年四月二八日群馬県知事に対して審査請求をなしたところ、昭和四二年一二月二五日同県知事による右審査請求を棄却する旨の裁決の通知を受けたことはいずれも当事者間に争いがなく、右各仮換地指定処分の取消しを求める本訴が昭和四三年三月二五日当裁判所に提起されたことは当裁判所に顕著な事実である。

二、そこで、以下本案についての理由の有無について判断する。

(一)  申立人らは本件施行地区の九五%以上が農地であり、残部の殆んども農民の宅地であるが、土地区画整理事業の対象土地は専ら宅地に限定されるべきであるからこの点に違法がある旨主張するので、右の点について検討する。

本件土地区画整理事業が土地区画整理法に基づいて施行されるものであることについては当事者間に争いがないところ、同法にいう土地区画整理事業とは都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善および宅地の利用の増進を図る目的をもつて同法で定めるところに従つて行なわれる土地の区画形質の変更および公共施設の新設または変更に関する事業をいい(同法二条一項)、右の都市計画区域とは都市計画の対象となるべき土地で建設大臣が決定する区域を指称する(都市計画法――大正八年法律第三六号、以下同じ。――一二条、二条、一条)。そして、市である被申立人が施行する場合の対象は右の都市計画区域内の土地につき土地区画整理事業をなすべきことが都市計画として決定されている区域の土地(都市計画法三条)に限定されなければならない(土地区画整理法三条三項)が、その都市計画決定区域は申立人ら主張のように狭義の宅地に限定されるものではなく、農地法上の農地等を含むすべての地目の土地を包含しうるのである。けだし、都市計画とは都市計画法一条の規定からも窺えるように交通、衛生、保安、経済等に関する諸々の都市活動の十全を期するため公共施設の整備改善および宅地の利用の増進を図ろうとする総合的な施策であり、また土地区画整理事業も右と同趣旨の目的をもつて健全な市街地の造成を図るための事業であると解せられるところ、これらの目的を果すためには当然にすべての地目の土地を対象地域に包含しうる必要があるからであり、土地区画整理法二条六項には同法において「宅地」とは公共施設の用に供されている国または地方公共団体の所有する土地以外の土地をいう、と規定されていること、事業の対象が狭義の宅地等に限定すべき旨の規定がないばかりでなく例えば同法八八条七項、一一三条、一三六条、同法施行令七六条等のように農地が事業の対象になる場合を当然に予想している規定が存すること等の点から考えても右の理は首肯しうるところである。もつとも農地が右事業の対象とされた場合には、その施行結果において必ずしも当該農地自体の利用の増進を図りえない場合が存在しうることは否定できないから、農地を対象とする土地区画整理事業の施行にあたつては仮にも耕作者の諸権利が不当に侵害されることのないように配慮されなければならないことは言うまでもない。

そうすると、疏乙第三号証、第五号証、第七号証、第一五、一六号証によれば、昭和二年一二月一四日勅令第三五六号により前橋市が当時の都市計画法二条の規定により市に指定されたのを始めとして、本件施行地区は昭和四年一一月一九日内閣によつてこれを前橋都市計画区域とする旨の内務大臣決定が認可され、その後昭和三五年一二月二四日建設大臣による前橋都市計画区域変更決定を経て昭和三七年三月二二日建設大臣によつて本件土地区画整理事業を施行すべき区域として決定されていることが一応認められる本件においては、仮に申立人ら主張のとおり本件施行地区の九五%以上が農地であり、その残部の殆んども農民の土地であつても、これを土地区画整理事業の対象にすることは適法というべきであるから、申立人らの前記主張は採用できない。

(二)  申立人らは本件土地区画整理事業の目的は当該土地所有者(農民)の利益を無視して専ら申立外前橋工業団地造成組合の工場誘致の利便を図ることにあるから土地区画整理法の制度目的から逸脱した違法のものである旨主張するので、この点について検討する。

疏乙第七号証によれば、本件事業計画中には、まず事業目的として、「本地区は畑地を主とする農耕地帯であるが、昨近地区内に個人住宅および市の工場誘地施策による工場建設が目立ち、漸次市街化の様相がみられ、前橋第一号工業団地の開発整備、市街化地域としての宅地の整備をなすと共に昭和三九年度からの都市計画街路および土地区画整理事業計画に即応し、大友町西通線、室田線、元景寺南線の整備改善を図ると共に地区住民の要望をも配慮し、土地利用の合理化によりここに新しい秩序ある市街地を造成し、もつて公共福祉の増進に資そうとする。」旨をうたい、さらに区画整理設計として「本事業区域は前橋都市計画区域界に接した未整理の市街化地域と重要幹線街路および工業団地造成整備を目的として土地区画整理事業を施行するもので、都市計画街路、区画街路、公園緑地、工業団地等の用地を取得し街路築造排水等の整備を行うと共に宅地利用の増進を図ろうとする。」としていること、右設計の具体化として整理事業施行前後の地積の移動関係につき、公共用地に関しては、施行前合計六・四一%(公共用地、宅地等施行地区全体に対する割合、以下同様。)の道路を施行後合計一一・三七%に増加させ、公園、緑地を新設し、水路は施行前合計一・六六%を施行後合計〇・三九%の減少にとどめる等して結局公共用地施行前合計八・四八%を施行後合計一六%に増加させ、他方、民有の宅地に関しては、山林、原野等は廃止し、田は施行前九・三一%を施行後四・八%に、畑は施行前四〇・四八%を施行後二一・八九%にそれぞれ減少させ、狭義の宅地は施行前三五・〇九%を施行後四一・三八%に増加させる等して結局民有の宅地施行前合計八五・五二%を施行後合計六八・四一%の減少にとどめていること、前記事業目的を遂行するために街路、公園、緑地、河川、水路等の公共施設の具体的な整備、改善方針を掲げていること、整備事業の施行の結果宅地価額の総額は施行前より一億六一七八万五九一四円の増加が見込まれていることがそれぞれ一応認められ、疏乙第六、七号証によれば昭和三六年五月一日首都圏整備委員会により前橋市につき当時の首都圏備法二四条一項の規定により市街地開発区域として指定されており、また本件施行地区内の土地につき都市計画街路として決定されていることがそれぞれ一応認められる。そして、以上の事実のほか後記(四)において一応認定した本件の公共用地および保留地等に基づく減歩率が適法であることを総合すると、本件土地区画整理事業は工業団地造成事業および都市計画街路設置の円滑な遂行をも合せ所期して前記公共施設の整備改善および宅地の利用の増進を図ることにより全体として秩序ある市街地を造成し、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とするものであつて、申立人らの主張するように当該土地所有者(農民)の利益を無視して専ら工場誘致の利便を図るためのものではないことが一応認められる。

なお、本件施行地区が仮に申立人ら主張のように耕地整理を経ていて、農地の利用上は何の障害もないとしても、耕地整理と土地区画整理とでは自らその制度、目的を異にするものであるから、右の点は土地区画整理事業施行の妨げとはならないと解せられる。また、そもそも都市計画とは前記のとおり都市活動の十全を期するための総合的な施策であつて、その都市計画事業の中には土地区画整理事業のほか前記工業団地造成事業、都市計画街路決定に関する事業等も含まれると解せられるから、これらの事業は本来個別的に行なわれるよりも寧ろ総合的な計画のもとに実施されることが望ましく、従つて本件土地区画整理事業が先に一応認定したように工業団地造成事業および都市計画街路設置の円滑な遂行をも合せ所期して施行されることは都市計画の目的に適つたものであるというべきである。

よつて、本件土地区画整理事業の目的は何ら憲法二九条一項、三項に反することなく適法であるから、この点に関する前記申立人らの主張も採用することができない。

(三)  申立人らは二五%の土地を奪われたうえ従来の水路を破壊されて水田の耕作が不可能になるから農業経営と生活が破壊され、その結果農業をやめて転業するか、あるいは山地に移転して開墾するかの選択を余儀なくされるから本件土地区画整理事業は憲法二五条一項、二二条一項に違反する旨主張するので、この点について検討する。

当事者間に争いない別紙第一ないし第二〇目録記載の本件各仮換地指定処分の内容と疏甲第一ないし第三号証を総合すると、申立人らはいずれも農業を営み、かつ自家用米を自給して生活してきたものであること、申立人らのうち申立人福島元雄、同小畑広次、同小林真六、同小林朋一は本件施行地区外には全く水田を所有せず、その余の申立人らも本件施行地区外には若干の水田しか所有していないこと、本件各仮換地指定処分の減歩率は平均二〇%余であることがそれぞれ一応認められるから本件各仮換地指定処分の結果、申立人らのうちには従前の農業経営に若干の変動を来さざるを得なくなる者もあらわれるであろうことは想像に難くない。

しかしながら、先に一応認定したとおり公共用地としての水路は施行前合計一・六六%を施行後なお合計〇・三九%は保持する計画であり、また疏乙第七号証によれば地区内のほぼ中央を貫通している中群馬用水路について地区内の大部分が農耕地であるためこれの一部を改修する等整理後当分の間農業用排水路として使用できるよう側溝等の整備を図ることが予定されていることが一応認められ、また申立人福島元雄、同小畑広次、同小林真六、同小林朋一、同立見幸一らが被申立人から本件施行地区内に造成された水田の仮使用の提供を受けていることは申立人らの自認するところである。そして、以上の事実と本件土地区画整理事業は現在の土地の境界、地目をすべて白紙の状態にして仮換地整理後の土地に新たに境界線を設定し、従前の権利関係および地目を異動させないこととするものである旨の被申立人の主張を合せ考えると被申立人は申立人らの農業生活に配慮しつつ右整理後は前記二〇%余の減歩を除いた点につき従前地との照応がはかられることになることが一応認められる。そうすると疏甲第一ないし第三号証中申立人らの農業生活が破壊される旨の前記申立人らの主張事実に符合する部分はにわかに措信できず、他に右申立人ら主張事実を疏明する資料はない。

なお、本件各仮換地指定処分にあつては、前記減歩率は後記(四)のとおり止むを得ないものであつて適法であるところ、仮に右の減歩によつて申立人らの主張するように従来の農業生活をそのままには維持し得ない結果を招いたとしても、かかる場合こそその損失は充分な仮清算金、清算金等の補償を受けたうえ健全な市街地の形成のために仮換地指定処分等を受忍すべき義務があると解せられる。

よつて、以上いずれの意味からも本件各仮換地指定処分が憲法二五条一項、二二条一項に違反するとの前記申立人らの主張は採用できない。

(四)  申立人らは本件各仮換地指定処分による減歩率が公簿面上平均二〇%実面積平均二五%を越えるが、これは法によつて許容される裁量の範囲を越え、違法である旨主張するので、この点について検討する。

本件各仮換地指定処分の減歩率が平均二〇%余であることは先に一応認定したとおりであるが、実面積が平均二五%を越えるとの点に関する疏明資料はない。

ところで、仮換地指定にあたつても土地区画整理法八九条に規定するいわゆる照応の原則を考慮してなされるべきである(同法九八条三項)が、右原則は単に多数の権利者間相互の関係において公平であるだけでは足りず、当該権利者にとつても従前地と仮換地とが照応することが必要である。もつとも土地区画整理事業は公共施設の新設をはかるための用地あるいは施行費用に充てるための保留地を必要とするからこの関係上仮換地指定にあたつても一定の減歩をなすことは容認されると解せられる。その結果、照応を欠く不均衡がやむを得ぬ結果として生じた場合には仮清算金、清算金あるいは減価補償金等によつて補償されるものである。ただし、土地区画整理は土地収用と異り土地の交換分合を本体とするからこの観点からも自ら減歩率に限界があることは明らかであるところ、減歩率の適法性は各施行地区の実情に即して従前地と仮換地との不均衡が不当ではないか、清算金等の調整によつて償いうるか等の点を考慮しつつ決せられるべきであると解せられる。

そこで、本件についてみるに、疏乙第七号証中減歩率計算表の記載によれば、公共用地と保留地とを合算した地積を基礎にして二〇%の減歩率が算出されていることが一応認められるところ、本件施行地区は先に一応認定したように都市計画街路決定、市街地開発地域指定がなされているため、これらの事業の円滑な遂行という面も合せ考えて公共施設の整備改善がなされる必要があるのであるが、右の見地に立つて判断すれば右減歩率計画の基礎とされた公共用地の地積は格別不当なものとは認められず、さらに右の保留地の地積も後記(七)のとおり適法に算出されていることが一応認められるから前記二〇%の減歩率算出の基礎はいずれも正当であり、従つて平均がこれを多少上廻るにすぎない本件減歩率は止むを得ないものといわなければならない。申立人らは農地に対しては狭義の宅地と異なり土地区画整理によつても何ら農地としての利用価値の増加はもたらされないから右減歩は許されない旨主張するのであるが、農地の減歩についてはその特殊性に鑑みより慎重になされるべきことは明らかであるものの、本件施行地区には前記一応認定したような都市計画上の要請があるほか疏乙第七号証よれば本件施行地区は元来畑作地帯であつて水田は前記九・三一%にすぎない実情にあることが一応認められるから従前地と同様の地積の水田の仮換地指定は困難であると考えられる。また申立人らは本件土地区画整理事業は専ら公共の利益のためのみを目的とするから農地に対しては減歩が許されない旨主張するが、本件土地区画整理事業が全体として秩序ある市街地を造成し、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とするものであることは先に認定したとおりであり、このような市街地造成行政と農業行政との調整には充分な留意がはらわれなければならないことはいうまでもないが(土地区画整理法成立の際の参議院附帯決議参照)、そうであるとはいえ、農地について全く減歩が許されないとする申立人らの右主張は何ら法に依拠しない極端な見解であつて採用できるものではない。

よつて、本件各換地指定処分による減歩率が違法であるとする前記申立人らの主張は採用できない。

(五)  申立人らは審議会委員選挙が適法に行なわれずに本件各仮換地指定処分がなされたから同処分は違法である旨主張するので、この点について検討する。

疏乙第八号証、第一〇号証の一ないし一〇、第一二号証によれば、昭和四〇年四月二八日前橋市告示第三三号により審議会委員選挙期日を同年六月三〇日と定める旨の公告がなされたこと、選挙人名簿が作成されたうえ、昭和四〇年五月一九日前橋市告示第四二号によりこれを同日から同年六月一日まで前橋市役所建設部計画課において午前九時から午後五時まで縦覧に供する旨の公告がなされ、現に右縦覧期間中の昭和四〇年五月二五日申立人小畑四郎および申立外山田栄一が右の縦覧をなしたこと、昭和四〇年六月一〇日前橋市告示第五一号により右縦覧期間内に異議の申出がないことのほか選挙人名簿に記載された者の数、選挙すべき委員の数等の公告がなされたこと、前橋都市計画西部第二土地区画整理事業施行規程(以下本件施行規程という)一〇条一項には「選挙すべき委員は候補者のうちから選挙する。」との定めがあるところ、昭和四〇年六月一七日立候補届出を締切り、同年六月一八日前橋市告示第五四号により届出のあつた候補者一二名の氏名、住所のほか、右は選挙すべき定数一二人を越えないので投票を行わない旨公告されたこと、市長による学識経験委員三名の選任を了したうえ、昭和四〇年七月一日前橋市告示第六〇号により前記候補者一二名のほか学識経験委員三名の氏名、住所を明示してこれらを審議会委員と定める旨の公告がなされるとともに当選人に対して当選の旨の通知がなされたことがそれぞれ一応認められ、疏甲第三号証中右認定に反する部分は措信し難く、他に右認定を左右するに足る疏明資料はない。

以上の事実によれば本件審議会委員の選挙手続は次の点を除いては土地区画整理法(五八条)、同法施行令(一九条ないし三七条)、本件施行規程(八条、一〇条)等の諸規定に従つて適法に行われたものと判断される。すなわち、前記のとおり昭和四〇年六月一〇日選挙人名簿縦覧期間内に異議の申出がないこと等の公告がなされたのであるから土地区画整理法施行令二四条二項、五項、二六条によれば選挙人は右公告のなされた日から一〇日以内は立候補届または立候補推薦届の提出ができ、従つて右期間満了の日である六月二〇日をもつて右各届出を締切るべきであり、さらに右期間経過の日である六月二一日に届出のあつた候補者の氏名、住所の公告ならびにその候補者の数が当該選挙において選挙すべき委員の数を越えないときまたは越えなくなつたとき投票を行わない旨の公告をしなければならないことは明らかである。しかるに本件においては前記のとおり右各規定に違背して六月一七日に立候補届出を締切り、六月一八日に届出候補者の氏名、住所ならびに投票を行わない旨の公告がなされたものである。ところで、審議会制度は本件のように地方公共団体が土地区画整理事業を施行する場合、換地計画の決定や仮換地の指定等施行地区内の土地の権利者に重大な利害関係のある処分を行うに当つて、当該施行地区内の権利者の意思を反映させるための必須の制度であるから適法に構成された審議会の意見を聞くことは仮換地指定処分の有効要件であると解せられる(土地区画整理法九八条三項参照)。そして本件においては前記のとおり現実に立候補届出の締切られた六月一七日までにすでに選挙すべき委員の数一二名と同数の立候補届出がなされていたのであるから正規の手続によれば投票によつて当選人を決定すべき事態が生ずることも予想しえないではない。従つて、前記手続上の瑕疵の効果如何が問われなければならないが、この点については、前記投票を行わない旨等の公告が現実になされてしまつた日である六月一八日から適法に立候補届出を締切られるべき日である六月二〇日までの期間は立候補届出可能期間である一〇日のうちの後半三日間に過ぎないこと、本件全疏明資料によるも現実に立候補届出が締切られた日以降に立候補届出等がなされた形跡はなく、そのうえ、審議会委員選挙に当つては、前記のとおり一連の公告がなされ、選挙民においては、右のとおりのこれが手続上の瑕疵については知りまたは知り得べかりし状態にあつたのに選挙民からは土地区画整理法施行令四〇条に基づく本件選挙の効力に関する異議の申立がなされた形跡も認められないこと、前記のとおり申立人らのうち申立人小畑四郎は昭和四〇年五月二五日に選挙人名簿の縦覧をなしていること等の事情を総合すれば、前記選挙手続の瑕疵は右の異議申立期間満了の日である昭和四〇年七月一四日の経過(同法施行令四〇条一項参照。)をもつて結局治癒されたものと解するのが相当である。

なお、本件全疏明資料によるも、申立人らの主張するように被申立人が賛成派と隠密裡に結びついてその有志に対し、審議会委員選挙が行われることを反対派に知らせないように指導したことおよび被申立人の職員が申立人らの主張する所有権移転登記手続を代行したことはいずれも認められない。

よつて、申立人らの前記審議会委員選挙が適法に行われなかつた旨の主張は採用できない。

(六)  申立人らは本件事業計画が適法に公衆の縦覧に供されなかつたから本件各仮換地指定処分は違法である旨主張するが、疏乙第九号証の一ないし四によれば、前橋市長が昭和三九年九月四日前橋市告示第五八号により本件事業計画を同日から同年九月一七日まで前橋市役所建設部計画課において午前九時から午後五時まで縦覧に供する旨の公告をなしたうえ、右公告どおり縦覧に供されたことが一応認められ、右認定に反する疏明資料はないから、申立人らの前記主張は採用することができない。

(七)  申立人らは本件事業に要する費用のうち約三分の二は保留地処分でまかなうことになつており、このため三万五四五八・〇五坪の土地が無償で取り上げられようとしている点において土地区画整理法一一八条一項、憲法二九条一項、三項に違反する旨主張するので、この点について検討する。

疏乙第七号証によれば、本件土地区画整理事業に要する費用の合計は二億一〇〇〇万円であるが、その負担は被申立人の負担金が三八九四万九四一五円、保留地処分金が一億三八二八万六三九五円、寄附金その他が二二四九万六〇〇〇円、公共施設管理負担金が一〇二六万八一九〇円であること、保留地予定地積は三万五四五八・〇五坪であるが、これは整理前宅地価額総額を整理後宅地価額総額から控除して得られる宅地価額総額の増加額を整理後坪当り予定価額で除して保留地として取りうる最大限地積を求め、これの八五・四%をもつて充てたものであること、前記保留地処分金は右保留地予定地積に整理後坪当り宅地価額三九〇〇円を乗じて得られる金額であることがそれぞれ一応認められる。

そうすると、右の保留地予定地積の算出およびその結果としての保留地処分(いわゆる費用減歩)は保留地の基準を定める土地区画整理法九六条二項の規定に照して適法であるというべきである。そして、同規定の趣旨は市街地において施行前の宅地価額と同額の施行後の土地を確保せしめれば権利者の保護に欠けるところがないからその差額につき保留地処分をなしうるとするものであるが、健全な市街地の形成という土地区画整理事業の目的遂行のための費用に充てるためのものである点からも同規定に従つてなされる保留地処分は何ら憲法二九条一項、三項に違反するものではないと解するのが相当である。そして施行者負担を原則とする土地区画整理法一一八条一項の趣旨は市である被申立人が施行者である場合についていえば、従前の事業費用は土地所有者または関係人の負担であつたものを施行者自身が負担すべきものとした点にあるのであるが、施行者負担といつても同法に定めのある保留地処分金(九六条二項)、公共施設管理者負担金(一一九条の二)等のほか寄附金等を事業の費用に充てることをも否定する趣旨ではないことは明らかであるから前記事業費用の負担は何ら同法一一八条一項に反しない。

よつて、申立人らの前記主張も採用できない。

以上説示のとおり本件各仮換地指定処分は申立人ら主張のいずれの点においても一応適法であると考えられるからその各取消しを求める申立人らの本案請求は理由がないとみえるというべきである。

三、よつて、申立人らの本件各申立はその余の点について判断するまでもなくいずれもこれを失当として却下することとし、申立費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項本文、九五条本文を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 安井章 松村利教 大田黒昔生)

(別紙目録省略)

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